こんにちは、管理人の高田です(@eizo_memo)。
FinalCutProなどの動画ソフトから QTクリップを書き出す際、誰もが一度は抱く疑問だとおもうのですが…
たとえばアーカイブ用のマスターデータなど なるべくクオリティを維持したままでクリップを書き出したい場合、ついつい「非圧縮」系のコーデックを選択したくなってしまう方も多いと思います。
ところが、QuickTime(.mov)には“非圧縮”に相当するコーデックとして、次の3つの選択肢が存在します。
・QuickTime- アニメーション(*可逆圧縮)
・QuickTime- 非圧縮4:2:2(8bit/10bit)
さて、上記のなにがどう違い どれを選ぶべきなのでしょうか?
記事の目次
それぞれの特徴を整理する
ネットで調べてみても、この辺について詳しく書いている記事というのがあまりなくて イマイチよくわからずにいたんですが 本家アップルの過去記事(カラースペース考察:コーデックの特性)に、このへんについて書かれているのがあったんで、引用しつつここにメモします。
で、上記記事中の表を、引用させていただくと各コーデックは以下のように整理されるようです(※比較の参考としてProResの情報も追加しています)。
■参考資料(appleのサイトの過去記事からの引用)
さて、上記表で分かるように「圧縮:なし」「非圧縮」「アニメーション」は、圧縮に関しては いずれも非圧縮もしくは可逆圧縮ということで 劣化を伴わないものを使用しているわけですが “カラーサンプリング”と”量子化ビット数”に違いがあるわけですね。
“圧縮:なし”と”アニメーション”
カラーサンプリング方式がRGB4:4:4なので、YUV系コーデックと異なり 彩度情報が間引かれることはありません。アルファチャネルを含めることができる点も特徴。「なし」と「アニメーション」の違いは、前者が完全にデータ非圧縮なのに対し 後者はRLEデータ圧縮が施される点です。
「アニメーション」コーデックでQuickTimeの圧縮品質を100%とする場合、空間/時間圧縮の適用なしにファイルサイズを低減できるロスレス圧縮が可能となります。
非圧縮8bit 4:2:2、非圧縮10bit 4:2:2
共にYUV4:2:2の非圧縮コーデックで、8bitではYUV各色256階調、10bitでは1024階調となります。
…ということで、それぞれには「圧縮以外」の部分で相違があることがわかりました。
では、そうした事実を踏まえたうえでどれを選ぶべきなのでしょうか?
画質は「圧縮」がすべてではない!
ついつい「高画質=非圧縮」と単純に考えてしまいがちですがそもそも映像のクオリティを決定するのは”非圧縮か否か?”という要素だけではありません。
大事なのは次の3要素。
・カラーサンプリング
・量子化ビット数
要するに「圧縮(帯域圧縮・データ圧縮)」というのは画質決定の一要素に過ぎないので、それ以外の部分(カラーサンプリングや量子化ビット数)にも注目する必要がありますよ…ということ。
ここで、ごく当たり前のことを確認しておくと….
圧縮(帯域圧縮・データ圧縮)方式
圧縮するものよりはしないもの…非圧縮や可逆圧縮がよい。
カラーサンプリング
カラーサンプリングは 動画データの「色情報」に関るもので、まったく間引きがない状態が「4:4:4」となる。
なので「4:2:2」や「4:2:0」などよりは「4:4:4」の方が良い
量子化ビット数
量子化ビット数は、動画データの「階調情報」に関わるもので、8bitよりは10bitが、さらに言えば12bitのほうが良い。
もちろん画像のクオリティーがあがれば データ容量もはねあがるわけでこのへんはトレードオフの関係です。
具体的に比べてみる
さて、上記の引用記事を信じる限り、基本的に「圧縮:なし」と「アニメーション」はクオリティ的には同一のもののようですので、ここでは同じものとして扱います。
「圧縮:なし/アニメーション」と「非圧縮8bit 4:2:2」とを比べてみましょう。
圧縮とビット深度は同じですが カラーサンプリングでは「圧縮:なし/アニメーション」の方が優れていますから、単純に画質だけを求めるのであれば、この場合は「圧縮:なし/アニメーション」を選択したほうがよさそうです。
さて、問題は「圧縮:なし/アニメーション(8bit)」と「非圧縮10bit 4:2:2」のどちらを選ぶか?
ビット深度では「非圧縮10bit 4:2:2」の方が優れているわけですが、カラーサンプリング的には「圧縮:なし/アニメーション(8bit 4:4:4)」の方がいいわけです。
これだと 一概にどちらがいいともいえないですね。
用途に応じたコーデックを選ぶ
つまり、どちらかが優れているという話ではなく、それぞれの特徴を踏まえて「用途しだい」で選択すべし…ということになるんですね(当たり前だけど)。
例えば、キーイング用のグリーンバック素材を保管しておくのであれば色情報が間引かれない「なし/アニメ」を選んだ方がいいと思いますし、光系エフェクトをガンガン使っていたり微妙なグラデーション表現のある素材であれば、ビット数の高い「非圧縮10bit 4:2:2」の方が良い…というようなことです。
さらにいえば「アーカイブ用途でできるだけ高画質で作成したい」といった場合、そもそも「非圧縮」を選ぶ必要があるのかどうかを検討してみてもよいでしょう。
今では「ProRes 4444 XQ」という「4:4:4 12bit」のコーデックだって存在するのです。
また実際の運用にあたっては、動画を保管しておくストレージなどの容量もあるでしょうから、やみくもに高画質を求めなくともよい場合もあるでしょう。
参考にさせて頂いたたサイト・書籍
WEBサイト
カラースペース考察(apple)
EDIUS.JP(03:圧縮)
Apple ProRes について
書籍
そこが知りたい最新技術 オーディオ・ビデオ圧縮入門MPEGの規格策定に携わった専門家の方々による非常に分かりやすい圧縮技術の入門書。「圧縮」に関する基本的な考え方を学ぶことが出来ます。
わかりやすい解説ありがとうございます。
とても参考になりました。